所在地と環境
牛窓町は、岡山市の東南約30kmに位置する人口8千人に満たない小さな町で、黒島、前島、黄島、青島、鼠島の5島の背後に小豆島を、さらに遠方に四国の山々を望む景勝地である。
神功皇后が三韓からの帰途立ち寄ったという伝説のあるこの町は、古くから瀬戸内海を航行する帆船の潮待ち港として栄え、江戸時代には朝鮮通信使を迎え、当時建設された一文字波堤は現在も牛窓港で機能を果たしている。蔬菜農業を中心とする半農半漁の田舎町で、最近 『日本の工一ゲ海』と云うキャッチフレーズで観光客の誘致に努めているが、実験所周辺の閑静さは保たれている。
岡山大学キャンパスから車で60分の至便な距離に位置し、近くには岡山県水産試験場および栽培漁業センターがある。児島湾口から東へ10km、播磨灘西北端に位置している牛窓海域は、児島湾に流入する旭川、吉井川、倉敷川の三大河川がもたらす泥が小豆島に遮ぎられて滞留するため、海水の透明度は瀬戸内海中最も低い。一方で、そのため付近の島の磯にはまだかなり豊富な動物相が保たれている。特に砂泥と懸濁物の豊富な環境によく適応した種類(コンボルータ、ミサキヒモムシ、ツバサゴカイ、スジホシムシモドキ、ゴゴシマユムシ、ウミフクロウ、アカニシ、イイダコ、シャコ、イシガニ、イトマキヒトデ、バフンウニ、サンショウウニ、ハスノハカシパン、イシコ、マナマコ、ユーレイボヤ等)が多く、近年激減した動物種もあるが、研究材料として利用可能である。