岡山大学 理学部

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昆虫の季節適応機構の解明 日長と温度による制御の仕組みを、初めて分子レベルで明らかに

2020年03月13日

◆発表のポイント

  • 昆虫は熱帯に起源をもち、そこから温帯へと生息域を広げてきたと考えられています。この過程で、春から夏にかけて繁殖し、休眠により冬を越すという季節に適応した生活史を獲得したと考えられています。
  • この季節への適応は、日長への反応によるとされてきましたが、本研究では、幼虫発育を遅延させて越冬するタンボコオロギを用いた研究により、この季節適応が、光周期による脱皮の調節と、温度による成長速度の調節の2つの経路で制御されることを初めて分子レベルで明らかにしました。
  •  岡山大学大学院自然科学研究科(理)の篠原従道大学院生(博士前期課程1年)、富岡憲治教授らの研究グループは、昆虫の季節適応の仕組みを解明しました。本成果は、2月24日に米国科学アカデミー紀要「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America」電子版に掲載されました。
     昆虫は熱帯に起源をもち、温帯へと生息域を拡大してきたと考えられています。常に暖かい熱帯と異なり、温帯には四季があり、生存のためには厳しい冬を越すことが不可欠です。昆虫が卵やさなぎで越冬することはよく知られています。しかし、幼虫で越冬する昆虫がどのようにして季節に適応しているのかは、未解明でした。本研究では、タンボコオロギを用いて、日長が脱皮回数と体のサイズを決定することと、他方温度は体の成長速度を決定しており、両者が協調して作用することで、秋から冬にかけての短日と低温が脱皮回数を増加させ、幼虫発育速度を低下させ、幼虫で厳しい冬を乗り越えていることを明らかにしました。本研究は徳島大学とPompeu-Fabra大学(スペイン王国)との共同で行ったものです。




    図:日長と温度によるタンボコオロギ幼虫発育の制御の仕組み



    ◆研究者からのひとこと

     体内時計を使った昆虫の季節への適応機構を研究してきました。昆虫は、日長の変化を手掛かりに、季節変化を前もって知り、生理的な準備をしていると考えられてきました。この研究ではこの季節適応に、日長を読み取って脱皮を調節する仕組みに加えて、温度が直接発育速度を調節する仕組みが関係することを、それらの背後にある分子機構も含めて明らかにすることができました。しかし、日長がどこで、どのようにして感受されているのか、温度がどこで感受されているのかなど、多くの問題が残されていて、興味は尽きません。
    富岡教授


    ■論文情報論 文 名:Photoperiod and temperature separately regulate nymphal development through JH and insulin/TOR signaling pathways in an insect掲載紙:Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America著 者:Taiki Miki, Tsugumichi Shinohara, Silvia Chafino, Sumihare Noji, and Kenji TomiokaD O I:doi.org/10.1073/pnas.1922747117U R L:Photoperiod and temperature separately regulate nymphal development through JH and insulin/TOR signaling pathways in an insect | PNAS

    <詳しい研究内容について>
    昆虫の季節適応機構の解明 日長と温度による制御の仕組みを、初めて分子レベルで明らかに

    <お問い合わせ>
    岡山大学大学院自然科学研究科(理)
    教授 富岡憲治
    (電話番号)086-251-8498
    (FAX番号)086-251-8498


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