講演会のお知らせ (2/22:牧島 一夫氏 (理化学研究所グローバル研究クラスタ グループディレクタ))
2018年02月05日
演題:マグネターの最新像と極限状態での物理学
講師:牧島 一夫氏 (理化学研究所グローバル研究クラスタ グループディレクタ))
日時:2月22日(木) 15:00〜
場所:総合研究棟6階16区画
概要:
中性子星(NS)は、初期質量が太陽の8-20倍程度の星が進化の最期に、重力崩壊型の超新星爆発を起こす際に作られ、中性子の縮退圧で支えられた、超高密度の天体である。NSの磁場はB=10^8-10^15 Gと広汎に分布する。うち臨界磁場(4×10^13 G)を越す約30個は、マグネター(magnetar)と呼ばれ、その一部は超新星残骸の中に存在する。B~10^12 G の通常NSと異なり、マグネターは電波は出さず、おもにX線帯域で輝く。そのスペクトルは、温度 〜5×10^6 K の黒体放射に似た軟X線成分と、>100 keVまで延びる極めて硬い硬成分から成る。マグネターでは質量降着は起きておらず、また自転が数秒と遅いので、それらのX線放射は、強い磁場を源泉とすると考えられる。しかし磁場がいかに硬軟のX線成分に転換されるか、マグネターの強烈な磁場はいかに生成・保持されるか、より磁場の弱いNSとの違いの原因は何かなどの基本課題が未解決である。本講演では、自由歳差運動に伴うNSの変形から推測すると、マグネターの内部には〜10^16 Gの超強磁場が内在し、それらは中性子のスピン整列で作られ、この磁場の対消滅で解放されるエネルギーが電子・陽電子ペアを作り、その陽電子がNS表面で対消滅するさいのガンマ線が、超強磁場中のQED効果である「二光子分裂」過程で< 511 keVの連続硬X線を作るとともに、こうした過程で加熱されたNS表面が熱的軟X線を放射するという描像(Makishima 2016) を紹介する。
連絡先:異分野基礎科学研究所 量子宇宙研コア 吉村 太彦(内線8499)