表皮分化の鍵遺伝子 種子形成の過程で必須
2015年06月25日
岡山大学大学院自然科学研究科(理)の髙橋卓教授の研究グループは、東京大学との共同研究で、シロイヌナズナを用いて表皮分化の鍵となる遺伝子の突然変異体を単離し、この遺伝子が働かないと種子形成の過程で致死になることを発見。表皮細胞の分化が植物の生育に不可欠であることを突き止めました。本研究成果は日本植物生理学会の国際誌「Plant & Cell Physiology」6月号に掲載されます。
本研究によって、植物のからだ作りやストレス応答における表皮の働きについて、重要な手がかりが得られると期待されます。
<業 績>本研究によって、植物のからだ作りやストレス応答における表皮の働きについて、重要な手がかりが得られると期待されます。
髙橋教授らの共同研究グループは、PDF2、ATML1両遺伝子がともに全く機能しない変異体の分離を試みた結果、そのような二重変異の芽生えは得られず、さやの中で種子ができる前に胚の発生が停止。これらの遺伝子が生育に必須であることを明らかにしました。植物の表皮分化の鍵となる遺伝子の変異が生育に不可欠であることが示されたのは、世界で初めての成果です。
さらに、植物の遺伝子組換え技術を用いて、生育途中にこれらの遺伝子の働きが強制的に阻害される植物を作出したところ、葉や茎に部分的な表皮細胞の欠損が見られるようになりました。
<背 景>
同グループはこれまで、両遺伝子の働きが弱まった二重突然変異体を作出し、表皮が正常に分化せず、内部の組織と同じ細胞がむき出しになったような興味深い形質が現れることを報告していました。両遺伝子から作られるタンパク質は互いに機能が重複しており、また、転写調節因子として他の遺伝子の働きのスイッチのオンオフを制御する表皮分化の重要な鍵遺伝子と考えられていました。
<見込まれる成果>
本研究は、植物の器官形成や環境ストレス応答における、表皮細胞の働きを突き止める上で、重要な手がかりになると期待されます。
<補 足>
転写調節因子は、DNAの遺伝暗号に従って特定のタンパク質が作られる第1段階“転写”のスイッチのオンとオフを制御するDNA結合タンパク質で、その働きが特定の組織や細胞に特定のタンパク質が作られるか否かを決める重要な役割を果たしている。
本研究は文部科学省/科研費特定領域研究「植物メリステム」#21027028、 #23012032の助成を受け実施しました。
図1:野生型の種子(上)と胚発生停止を示したPDF2 、ATML1の2遺伝子の完全な機能欠損の二重突然変異の種子(下)
<発表論文情報>
論文名:"ATML1 and PDF2 Play a Redundant and Essential Role in Arabidopsis Embryo Development"掲載誌:Plant & Cell Physiology doi: 10.1093/pcp/pcv045著 者:Eriko Ogawa, Yusuke Yamada, Noriko Sezaki, Sho Kosaka, Hitoshi Kondo, Naoko Kamata, Mitsutomo Abe, Yoshibumi Komeda and Taku Takahashi
(なお、同誌電子版にて平成27年3月12日付けで公開されました)
<お問い合わせ>
岡山大学大学院自然科学研究科(理)
教授 髙橋 卓
(電話番号)086-251-7858