岡山大学 理学部

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船底に固着して抵抗増加を引き起こすフジツボ等の付着生物に対する新たな付着阻害剤の合成に成功!~効果的かつ毒性を示さない付着防汚剤の開発に期待~

2024年06月21日

岡山大学
兵庫県立大学
兵庫県立人と自然の博物館


◆発表のポイント

  • 天然有機化合物であるスカブロライドFの化学合成に成功しました。
  • 合成したスカブロライドFおよびその関連化合物が、タテジマフジツボ等の生物付着を阻害する効果を持ち、かつ毒性を示さないことを見出しました。
  • 生物や環境に優しい新たな付着防汚剤の開発が期待されます。

 岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域(理)の髙村浩由准教授、門田功教授、岡山大学大学院自然科学研究科の杉谷侑紀大学院生(研究当時)、森下諒平大学院生(研究当時)、兵庫県立大学自然・環境科学研究所の頼末武史准教授(兼 兵庫県立人と自然の博物館 主任研究員)らの研究グループは、天然有機化合物であるスカブロライドFの化学合成に成功しました。さらに、合成したスカブロライドFが、タテジマフジツボの付着を阻害する効果を持つことを見出しました。本研究成果は、2024年5月23日にイギリス王立化学会誌「Organic & Biomolecular Chemistry」のオンライン版に掲載されました。
 付着生物による被害の防止は、世界規模での社会的な課題の1つです。スカブロライドFは、ソフトコーラルから単離された微量成分の天然有機化合物です。今回、化学反応を用いることでスカブロライドFを人工的に合成することに成功しました。さらに、合成したスカブロライドFおよびその関連化合物を用いてタテジマフジツボに対する生物活性を評価したところ、これらは付着を阻害し、かつ毒性を示さないことを見出しました。今後、本研究成果を基盤として、効果的で安全な環境に優しい新たな付着防汚剤が開発されることが期待されます。


図1 生物活性評価


図2 タテジマフジツボのキプリス幼生に対する付着阻害活性(EC50

◆研究者からひとこと

 微鏡をのぞいて、自分たちが合成した化合物が付着阻害の効果を持つことが分かった時は、とてもうれしかったです。これからも、化合物を道具として生物付着の問題解決に貢献したいと考えています。
髙村准教授

■論文情報
論 文 名:Total Synthesis and Structure–Antifouling Activity Relationship of Scabrolide F
邦題名「スカブロライドFの全合成および構造–付着阻害活性相関」

掲 載 紙:Organic & Biomolecular Chemistry
著  者:Hiroyoshi Takamura, Yuki Sugitani, Ryohei Morishita, Takefumi Yorisue, Isao Kadota
D O I:10.1039/d4ob00698d
U R L:https://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2024/ob/d4ob00698d

■研究資金
 本研究は、独立行政法人日本学術振興会「科学研究費助成事業」JP21H01938、JP23K21115(研究代表:髙村浩由)、JP20K15576(研究代表:頼末武史)の支援を受けて実施しました。

<詳しい研究内容について>
船底に固着して抵抗増加を引き起こすフジツボ等の付着生物に対する新たな付着阻害剤の合成に成功!~効果的かつ毒性を示さない付着防汚剤の開発に期待~

<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域(理)
准教授 髙村 浩由
(電話番号)086-251-7839

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