岡山大学 理学部

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高温超伝導の秘密、解明!?結晶をひずませると電荷秩序が現れた!~省エネに貢献する超伝導の仕組み解明に新たな一歩~

2024年06月19日

◆発表のポイント

  • オリジナルの結晶ひずみ発生装置を製作しました。
  • 銅酸化物の結晶をひずませると、超伝導に代わって電荷秩序が現れることを発見しました。
  • 今後研究が進むことで、銅酸化物での高温超伝導発現の仕組み解明につながると期待されます。

 岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域(理)の川崎慎司准教授(低温物性物理学)、鄭国慶教授(同)、岡山大学大学院自然科学研究科の佃菜桜大学院生(研究当時)、ドイツ・マックスプランク研究所のChengtian Lin博士の国際共同研究グループは、ビスマス系銅酸化物高温超伝導体の結晶(銅と酸素が結合した正方形)をひずませると超伝導に代わって電荷秩序(電荷の並びに規則性がある状態)が現れることを発見しました。
 本研究成果は、6月14日付けの英科学誌「Nature Communications」に掲載されました。
 ロスの無い送電/蓄電により電気を無駄なく使える「超伝導」は、将来の脱炭素社会実現の切り札の一つですが、実用化には室温で超伝導になる物質が必要不可欠です。1986年に発見された銅酸化物高温超伝導体は、室温超伝導に最も近い物質として研究が進められていますが、なぜ超伝導が起こるのか、その仕組みはまだ分かっていません。本成果は、銅酸化物において「超伝導」と「電荷秩序」という異なる現象が、結晶の中でコインの裏表のように密接に関係していることを明らかにしました。超伝導発現の仕組みを解明する新たな鍵となることが期待されます。

◆研究者からひとこと

 近年、正方形や六角形の平面構造を持つ超伝導物質を精密にひずませ新しい性質を引き出す研究が注目を集めています。銅酸化物は正方形の代表的物質です。我々は5年前に装置開発からこの分野に参入しました。ゼロからスタートして幾重にも試行錯誤を重ねた末、2年前についに独自装置を完成させました。その後は装置をフル活用して(ただひたすら実験して)今回の成果を得ることができました。物性物理においてひずみ実験は未開拓領域です。我々は今後も超伝導の可能性を探求していきます!
川崎准教授

■論文情報
論 文 名:Strain-induced long-range charge-density wave order in the optimally doped Bi2Sr2-xLaxCuO6 superconductor
掲 載 紙:Nature Communications 15, 5082 (2024).
著  者:Shinji Kawasaki, Nao Tsukuda, Chengtian Lin, and Guo-qing Zheng
D O I:https://doi.org/10.1038/s41467-024-49225-w
U R L:https://www.nature.com/articles/s41467-024-49225-w

■研究資金
 本研究は、独立行政法人日本学術振興会(JSPS)「科学研究費助成事業」(基盤A・JP19H00657, 研究代表:鄭国慶、基盤C・JP19K03747、JP23K03323, 研究代表:川崎慎司)および公益財団法人村田学術振興・教育財団「研究助成」(研究代表:川崎慎司)の支援を受けて実施しました。

<詳しい研究内容について>
高温超伝導の秘密、解明!?結晶をひずませると電荷秩序が現れた!~省エネに貢献する超伝導の仕組み解明に新たな一歩~


<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域(理)
准教授 川崎 慎司
(電話番号)086-251-7803
(FAX)086-251-7825(物理事務室)

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