講演会のお知らせ (12/20 清水 克哉 氏 (大阪大学基礎工学研究科附属極限科学センター 教授)
2023年12月11日
講演題目:超高圧力下の水素化物超伝導体の合成研究
講師:清水 克哉 氏 (大阪大学基礎工学研究科附属極限科学センター 教授)
日時:12月20日(水)16:00
場所:コラボレーション棟3階 コラボレーション室
概要:
火山性のガスのなかでも猛毒の硫化水素を低温で液化して高圧容器で100万気圧以上に圧縮すると、転移温度が200 Kを超える超伝導体になることが発見された[1]。これを機に様々な水素化物超伝導体(Superhydrides)に高温超伝導の期待が高まっている。
単体の水素に圧力をかけて金属状態にすれば室温の超伝導体になるとの理論計算がある [2]。ただし、現在の高圧実験技術ではそれに必要な圧力には達成できていない。水素を直接加圧するのではなく、水素を多く含む化合物=水素化合物にも室温超伝導の候補に提案され[3]、前述の硫化水素の超伝導の発見に至った。その後、様々な水素化物において研究がなされ、現在最も高温の超伝導が実験的に確認されているものは、ランタンの水素化物(LaH10)であり、150 GPaの高圧力下で 250 Kを超える転移温度を示す[4,5]。単体の金属元素と水素とからなる水素化物は、網羅的な理論予測がなされ、それに基づいて検証実験が行われてきたが。そのなかでも高温の超伝導転移温度はY水素化物などの希土類元素の水素化物において多く発見され、現在では希土類水素化物に軽元素を加えた物質により高い超伝導転移温度が期待されている。また、将来の実用化のためには常圧力またはより低い圧力での高温超伝導の実現が必要である。我々は、それらの候補物質として希土類水素化物への軽元素添加に期待をして研究を進めている。
理論計算技術の発展により、実験家のセレンディピティに頼ることなく理論計算が新しい高温超伝導体の探索を主導していくようになったともいえる。原料元素と水素を高圧発生容器の試料室に封じ込め、理論予測された圧力まで加圧して加熱することで水素化物を合成し、その合成物の結晶構造と超伝導性を検証する実験を行っている。講演ではこれらの合成実験の詳細を紹介する。
参考文献
[1] A. P. Drozdov et al., Nature 525, 73 (2015).
[2] N. W. Ashcroft, Phys. Rev. Lett. 21, 1748 (1968).
[3] N. W. Ashcroft, Phys. Rev. Lett. 92, 187002 (2004).
[4] M. Somayazulu et al., Phys. Rev. Lett. 122, 027001 (2018).
[5]A. P. Drozdov et al., Nature 569, 528 (2019).
講演リーフレット
世話人:
小林達生(内線 7826)