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実施報告 >先端科学実習 −モデル生物の緑藻クラミドモナスの分子遺伝学−
先端科学実習 [ モデル生物の緑藻クラミドモナスの分子遺伝学 ]
担当者 |
高橋 裕一郎 教授(生物学科) |
日時・期間 |
平成25年9月30日(水)14:00 〜 16:00 |
場所 |
高橋 裕一郎 研究室 |
目的
植物細胞のオルガネラである葉緑体のDNAには、光合成を中心とした葉緑体タンパク質の一部をコードする遺伝子が存在する。これらの遺伝子の機能解析に重要である葉緑体形質転換の手法を理解することが本実実習の目的である。
報告事項
単細胞の真核藻である緑藻クラミドモナス(Chlamydomonas reinhardtii)は、葉緑体形質転換が最初に成功したモデル生物である(右図)。
粒子銃(パーティクルガン)による葉緑体への遺伝子導入法が確立され、葉緑体形
質転換用の薬剤耐性マーカーが開発されているため、効率的な葉緑体形質転換が可能である。
本実習では,粒子銃を用いたクラミドモナス葉緑体への遺伝子導入を行った。最初に遺伝子導入に用いるタング
ステン粒子を滅菌し,形質転換ベクターをタングステン粒子状に付着させる作業を行った。次に,培養した形質転 換用のホストの細胞を遠心濃縮し,形質転換用の寒天プレートに層状に撒き,アガープレート上の細胞の様子 を実体顕微鏡で観察した。最後に,ヘリウムガス式の粒子銃でタングステン粒子状に付着させた形質転換ベク ターを寒天プレート上のホスト細胞へ撃ち込む実験を行った。 実習の最後に,葉緑体へのDNA導入が成功するまでに克服しなければならなかった問題点について議論をし
た。第1の問題点は,葉緑体DNAが存在するストロマにDNAを導入するには,固い細胞壁,細胞膜,葉緑体の二
重の包膜(外膜と内膜)を通過しなければならない物理的障壁の存在である。粒子銃はタングステン粒子をヘリ ウムガスの圧力により音速まで加速できること,タングステン粒子が減速しないようにホスト細胞をセットした
容 器内を真空することにより,4重の物理的障壁を通過してDNAを葉緑体へ導入できることを解説した。第2の問
題点は,形質転換されたホスト細胞を効率的に選択する方法である。ここでは葉緑体で発現する薬剤耐性マー カーを用いることにより,薬剤(抗生物質)存在下で生育できる形質転換体のみを選択できる方法を用いた。 その結果,5千万程度のホスト細胞から100程度の形質転換体が得られるという50万分の1の形質転換効 率であっても,葉緑体形質転換が実用的であることを解説した。
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